1 財政について
(1) 事業所税について
ア 事業所税の概要について伺います。
【答弁者:財政部長】事業所税は、都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるため、都市の行政サービスと所在する事業所等との受益関係に着目して、事業所等において事業を行う者に対して課する目的税となります。なお、事業所税は、事業所等の床面積を対象とする「資産割」と、従業者の給与総額を対象とする「従業者割」によって構成されています。
イ 事業所税の過去3か年における歳入決算額について伺います。
【答弁者:財政部長】過去3か年の事業所税の現年度課税分と滞納繰越分を合わせた収入済額を1,000万円単位で申し上げますと、令和4年度は約24億円、5年度は約24億7,000万円、6年度は約24億6,000万円となっております。
ウ 事業所税の課税団体の要件について伺います。
【答弁者:財政部長】事業所税における課税団体の要件は、地方税法に規定されております東京都特別区、政令指定都市、首都圏整備法に規定する既成市街地を有する市、近畿圏整備法に規定する既成都市区域を有する市、又は官報で公示された最近の国勢調査の結果による人口若しくは最近の1月1日現在において住民基本台帳法に基づき住民基本台帳に記録されている者の数が30万以上の市のうち、政令で指定する市となっております。本市は、今申し上げた人口に関する要件に該当することから事業所税の課税団体になっているところです。
エ 事業所税の課税団体の要件から外れるのは何年度になると想定しているかについて伺います。
【答弁者:財政部長】第2期いわき創生総合戦略における国勢調査の人口トレンドを踏まえた推計では、2030(令和12)年の本市人口を29万2千人と推計しています。そのため、2030(令和12)年実施の国勢調査において、本市人口は、30万人を下回ると見込まれます。従いまして、これまでの例により、当該調査の結果が確定値として翌年の官報で公示される場合、本市は2031(令和13)年度中に事業所税課税団体の要件から外れることも想定されます。
オ 事業所税を課税できなくなることによる財政的な影響をどのように想定しているのかについて伺います。
【答弁者:財政部長】 先ほども申し上げましたとおり、年間で約24億円の事業所税が減収となります。一方、事業所税は普通交付税の算定において、基準財政収入額に算入されておりますことから、75%が普通交付税で補填されることになります。したがいまして、市の歳入への実質的な影響は、年間で約6億円になるものと見込まれます。また、課税対象となっている事業者におきましては、税負担が軽減されますことから、経営改善や経営基盤の強化につながるという側面もあります。加えて、企業誘致の面では、事業所税の負担が無いことが利点となり、本市を選択していただく上で、一定の効果をもたらすことが期待されます。
(2) 中長期的な財政の見通しについて
ア 事業所税が課税できなくなることによる歳入減や市長の公約である公共事業費の増額による歳出増などを想定した場合における本市財政への中長期的な影響について検証する必要があると考えますが、市の所見を伺います。
【答弁者:財政部長】現在、令和8年度を始期とする次期財政計画の策定を進めております。同計画は、一定の期間を設けながら、本市を取り巻く様々な財政運営上の課題に対し、計画的に対応していくために策定するものであります。策定にあたりましては、今後の人口の推移や少子・高齢化の進行等を踏まえつつ、将来的な財政需要や、市税等の歳入を見通していく必要があります。また、インフレの局面に入り、歳出削減が難しい状況となるなど、社会経済情勢の動きも注視していかなければなりません。加えて、議員からお話のありました事業所税の影響なども含め、近い将来、起こり得る環境の変化も考慮する必要があります。こうした様々な事象について、一つ一つ丁寧に検証を重ねながら、計画期間も含め、将来にわたり持続可能な財政運営を実現する計画をとりまとめてまいります。
イ 検証を踏まえた中長期的な財政の見通しを作成し、市民に分かりやすい形で公開すべきと考えますが、市の所見を伺います。
【答弁者:財政部長】市政に対する理解と協力をいただくうえでも、行政情報を市民の皆様に分かりやすくお伝えすることは重要であると認識しております。現在、予算につきましては、写真やグラフなどを活用し、内容を簡潔にまとめた「予算案の概要」を作成し公開しております。また、昨年度からは、「当初予算見える化ダッシュボード」を作成し、事業ごとの内容や内訳、推移などを、検索しやすい形で公開しております。現在策定中の財政計画におきましても、「伝わる計画」を念頭に置きながら、計画の内容も含め、分かりやすさを重視して、とりまとめてまいります。加えて、出前講座の活用や、広報紙への掲載など、様々な機会を通じて情報発信を行うことで、開かれた財政運営に努めてまいりたいと考えております。
2 医療について
(1) 医療機関の誘致について
ア 市長は自身のSNSにおいて、四倉地区市街地再生整備によって生じる公共施設の跡地に医療機関を誘致したいと発信していますが、その背景について伺います。
【答弁者:市長】市長就任1期目の4年間、そして先の市長選挙の期間に、多くの市民の皆様から、医療の充実を望む声をいただきました。その中で、四倉地区からは、市街地再生整備によって生じる公共施設跡地に医療や福祉関連施設の誘致を期待する声がありました。このような声を地域のニーズとして重く受け止めるとともに、今後医療機関等の進出の動きをしっかりと捉えながら誘致したいという思いでございます。こうしたことから、本年8月に開催されたいわき青年会議所主催の公開討論会において「四倉地区に医療機関の誘致を進めたい」と発言し、それをSNSでも発信したものです。
イ 今後、医療機関の誘致を推進するにあたっての取組みについて伺います。
【答弁者:保健福祉部長】医療提供体制の充実を図る上で、医療機関の誘致は重要な取組みの一つと認識しています。本市では、地域医療の重要な担い手である診療所医師を確保するため、診療所の新規開設または承継に対して補助金を交付しています。今年度、補助対象経費の拡大や、承継に係る要件を緩和するなどの見直しを行い、新規2件、承継2件、計4件の補助金を交付予定です。今後も、利用者の意見や他自治体の制度を研究しながら、制度の充実を図り、診療所の開設の促進に取り組んで参ります。
(2) 福島県立大野病院について
ア 市長は自身のSNSにおいて、福島県立大野病院との救急医療体制強化に言及していますが、その背景について伺います。
【答弁者:市長】現在休止している県立大野病院については、福島県や県立医科大学において、2029年度以降の開院を目指しているところです。新しい病院が開院すれば、市内の病院と相互に機能を補完し合うことで、双葉郡及び本市、双方の救急医療体制の強化が図られるものと期待できます。こうした点に関しまして、県の関係者とも私も何度か話題にさせていただいております。こういった経緯がありまして、いわき青年会議所主催の公開討論会で言及し、それをSNSでも発信したものです。
イ 今後、救急医療体制の推進にあたって、病院間の連携強化をどのように進めていくか伺います。
【答弁者:保健福祉部長】救急医療体制を推進するためには、病院間の連携が重要であると認識しています。このことから、市では、救急告示病院などが、休日及び夜間の二次救急医療を確保するために、救急搬送患者を当番制で受け入れる「病院群輪番制」を運営する市病院協議会に対し、補助金を交付しています。また、今年度からは、救急告示病院の救急搬送患者受入体制の強化に資するため、平日昼間の救急搬送患者の受入実績に応じて補助金を交付する「救急患者受入強化支援事業」を創設したところです。今後は、これらの事業の効果を検証しつつ、市病院協議会との連携を密にしながら、病院間の連携推進に取り組んで参ります。
(3) 福島労災病院について
ア 平成29年度に結ばれた福島労災病院の移転に関する基本合意書の概要について伺います。
【答弁者:保健福祉部長】平成29年5月に、「福島労災病院の移転に関する基本合意書」を、同病院、旧いわき明星大学、本市の三者で取り交わしました。この中で、大学が所有する土地への移転の実現に向け、三者が連携・協力して取り組むことや、移転先の土地と、現在の病院の土地を交換することなどを確認しました。その後、同年8月に、「福島労災病院の移転に関する確認書」を取り交わし、土地の測量、境界画定及び不動産鑑定に係る費用負担などを取り決めました。しかし、令和5年8月、福島労災病院から、移転予定地の安全性等を理由として、基本合意書等の撤回を求める申し出があり、同年12月に基本合意書等の撤回に係る確認書を三者で取り交わしました。これにより、現在、本市は福島労災病院の建替えに関与しておりませんが、福島労災病院の現地建替計画の進捗については、病院から適時情報提供いただいているところです。
イ 福島労災病院と連携した地域医療の推進に係る取組みについて伺います。
【答弁者:保健福祉部長】福島労災病院と連携した取組みとしましては、福島労災病院を研究拠点とした東京医科大学への寄附講座「運動機能再建外科学いわき地域教育寄附講座」の設置があります。当該寄附講座は、整形外科分野における医師を確保して更なる二次救急診療体制の強化を図るとともに、総合的な診療能力を有する医師の育成・支援や救急医療体制の構築に関する研究棟をとおして、地域の医療の質の向上に寄与することを目的としています。現在、当該寄附講座の設置により、福島労災病院に常勤医師3名が派遣されています。このほか、初期臨床研修医を受け入れている福島労災病院を含む市内3病院合同による初期臨床研修医の勉強会等の開催や、医学生を対象とした全国の研修病院合同説明会への参加を支援しています。また、本市が医学生を対象に実施している地域医療セミナーにおいて、福島労災病院をはじめとする市内の医療機関等に病院見学等の御協力をいただいています。