令和7年6月10日(火)16時15分からいわき市議会令和7年6月定例会で次のとおり一般質問をしました。
5番、いわき市議会日本維新の会、小野光貴です。
通告順に従って、一般質問を行います。
大きな質問の一つ目は、いわき市医療センターについてです。
一点目は、令和6年度包括外部監査についてです。
先般、『令和6年度包括外部監査の結果に関する報告書及びこれに添えて提出する意見』が公表されました。
当該報告書においては、いわき市医療センターの事業に対し、様々な指摘や意見がなされており、その内容について取り上げるメディアも一部ありました。
いわき市医療センターは、救急医療センターを持つ三次救急医療機関であり、本市のみならず、福島県浜通りの高度急性期医療を担っています。
また、福島県知事の承認を受けた地域医療支援病院としては、地域における医療機関等と連携し、地域医療の充実を図っているなど、多岐に渡る役割を有しています。
今後、高齢化の進行に伴う医療ニーズの増大が想定される中で、いわき市医療センターが本市で果たす役割はさらに重要性を増していくと考えます。
こうした背景を踏まえるに、いわき市医療センターの運営に係る事務の執行及び管理が高いレベルで適正かつ効果的に執行される必要があることは、病院事業の持続的な経営と医療提供体制の強化という観点からも明らかであると捉えます。
そこで、令和6年度包括外部監査を通して見えたいわき市医療センターの運営に係る事務の執行及び管理における課題とその対応などについて、以下、質問していきたいと思います。
まず初めに、一つ目として、監査の概要について伺います。
【市答弁】
包括外部監査は、自治体が、外部の専門家等と契約を締結して監査を行うことで、自治体に対する監査機能を充実させようとするものです。
令和6年度の包括外部監査のテーマは、「病院事業及び医療提供に係る事業の財務事務の執行及び管理について」です。
持続可能な地域医療提供体制を確保するため、公立病院の経営強化が重要であるなどの観点から監査のテーマとして選定されました。
監査の対象機関は、いわき市医療センター、及び、保健福祉部医療対策課です。
歳出や施設・財産の管理運営が関係法令等に準拠し適切に実施されているか、事業が経済的・効率的に実施されているかなどの視点から監査が行われました。
では次に、二つ目として、結果の概要について伺います。
【市答弁】
監査人が、現在の法令等に照らして違反又は不当と判断した「指摘」が29件、改善又は検討を要すると判断した「意見」が58件となっています。
このうち、病院事業に関するものは、「指摘」が27件、「意見」が54件です。
ご答弁いただいたような結果だったということで、私も報告書を読みましたが、今後、病院事業や医療提供に係る事業の適正化を進めていく上で、非常に有意義な指摘や意見がなされているとの感想を抱きました。
中でも、いわき市医療センターの研究研修費に含まれる応援医師に対する人件費の取扱いに係る指摘は、財務事務の執行及び管理のあり方だけでなく、医療提供体制のあり方とも特に結びつきが深いものであると捉えました。
そこで次に、三つ目として、研究研修費に含まれる応援医師に対する人件費の取扱いに係る指摘の概要について伺います。
【市答弁】
医療センターでは、外来診療応援や高度な手術を行う際の技術指導等を目的に、大学病院などから応援医師を招聘しています。
今回の監査では、医師招聘に係る事務手続きについて、大きく3点の指摘を受けたところです。
1点目は、応援医師には、専門的な技術指導も含め、総括的な業務を依頼しているが、委託契約書の内容は、「診療業務」のみとなっている。
2点目は、技術指導に係る記録がない。
3点目は、技術指導と診療業務を合理的に区分し、技術指導に従事した部分のみを一般会計繰出金の対象とすべきという内容です。
総務省が発出している地方公営企業繰出基準に基づき、公益性が高い一方で採算性が低い経費については、地方公営企業の経営の健全性を促進し、その経営基盤を強化するという観点から、一般会計から繰出しがなされています。
こうした背景の下、病院事業会計における研究研修費に対しては、一般会計から一定の割合で繰出しがなされているわけですが、そこに計上されていた応援医師報酬の取扱いについて、ご答弁いただいたような指摘があったとのことでした。
そこで次に、四つ目として、応援医師報酬に係る一般会計負担額の推移について伺います。
【市答弁】
応援医師分に係る過去3か年の実績について、応援医師報酬、一般会計負担額の順に100万円単位で申し上げますと、令和4年度が5億600万円に対し、2億4,200万円、5年度が5億3,500万円に対し、2億5,400万円、6年度が4億9,900万円に対し、2億4,100万円となっています。
報告書によれば、応援医師と交わされた契約書において、技術指導等は委託内容に含まれておらず、また、技術指導等を行った記録も残されていないという状況だったとあります。
とすれば、客観的に見た場合、応援医師報酬が研究研修費に該当するとは言いがたく、したがって、一般会計の繰出対象経費からは除外すべきであるから、ただ今ご答弁いただいた一般会計負担額が生じている状況は適正ではないのではないかとの包括外部監査人による指摘は、至極もっともであるように私としては感じました。
そこで次に、五つ目として、不適切な取扱いが行われていた原因について伺います。
【市答弁】
医療センターが応援医師に依頼する業務は、患者さんの診療だけではなく、主治医が治療を進めるにあたって、専門的な意見を伺う「助言・指導業務」のほか、医療現場で生じる様々な相談事への対応など、医療スタッフのスキルアップに繋がる業務が含まれています。
この依頼内容は、応援医師との相互の共通認識の下、業務に従事していただいています。
このため、書類上、応援医師の業務内容を「診療業務」としていたことについては、これまで、「技術指導」、「診療業務」を一連の業務と捉え、総括的に依頼していると認識していたことによるものです。
当該指摘が問題視している人件費の不適切な取扱いは、形式的には財務事務の執行及び管理に係るものではありますが、病院事業における研究研修費という医療人材育成に直結する経費としての性質上、応援医師による技術指導等の記録が取られていなかったことによって、いわき市医療センターの医療提供体制へ何かしらの影響が及んでいたのではないかと懸念されるところです。
そこで次に、六つ目として、不適切な取扱いが行われていたことが医療提供体制に及ぼした影響について伺います。
【市答弁】
今回の応援医師招聘に係る指摘は、あくまで事務手続き上のことで、当該指摘に関連して、医師招聘に至らなかった事例はなく、これまで診察、治療や手術といった医療サービス提供への影響はございません。
市当局としては、そうした認識であると理解しました。
では次に、七つ目として、是正策について伺います。
【市答弁】
今回の指摘を踏まえ、応援医師に対して交付する「非常勤医師労働条件通知書」に、今年度から、依頼する業務内容を明記することとしました。
これにより、「技術指導」と「診療業務」を合理的に区分した記録ができるようになり、予算対応についても、明確になるものです。
今後におきましても、今回の監査結果を真摯に受け止め、是正や改善に取り組んでいきます。
応援医師による技術指導等の記録が残されることによって、本市における喫緊の課題である医療人材の育成がより効果的に推進されることも期待できるかと思います。
本市は、『令和7年度いわき版骨太の方針』などにおいて、ひとづくり日本一の実現を目指すというように掲げているわけですから、いわき市医療センターにおける財務事務の執行及び管理の適正化という観点からだけではなく、医療人材育成による地域全体における医療提供体制の強化という観点からも、できる限り速やかにご対応いただければと思います。
しかしながら、先ほどご答弁いただいた応援医師報酬に係る一般会計負担額の推移を鑑みるに、本件の是正に際しては、病院事業会計にそれなりの規模で財政的な影響があるのではないかと懸念されるところです。
そこで次に、八つ目として、是正に伴う財政的な影響について伺います。
【市答弁】
応援医師の報酬は、研究研修に要する経費として、これまで一般会計負担金の対象としてきました。
監査の指摘は、技術指導と診療業務を合理的に区分し、技術指導に従事した部分のみを一般会計繰出しの対象にすべきというものです。
しかしながら、技術指導に関して記録を作成しておらず、業務割合等を試算できないことから、影響額を明確にお示しすることは困難でありますが、診療業務のみを依頼する場合は、今後、研究研修費の対象外とする予定のため、この分の一般会計負担金は減額することも見込まれます。
コロナ禍がある程度収束したことに伴う空床補償の終了や長引く物価の高騰などによって、病院の経営についてもなかなか厳しい状況にあるかと思います。
今回の包括外部監査では、研究研修費に含まれる応援医師に対する人件費の取扱い以外にも、様々な指摘や意見がなされているところです。
それらの是正や改善に係る財政的な影響についても精査した上で、適切な対応をお願いしたいと思います。
最後に、九つ目として、今後どのようなスケジュールで是正や改善を進めていくのかについて伺います。
【市答弁】
包括外部監査で指摘された事項等については、監査実施年度の翌年度の6月末までに、是正や改善などの措置の状況報告が必要です。
また、すぐに対処が困難な指摘事項等についても、監査実施年度の翌年度末までに今後の対応方針を決定することが必要です。
このように是正や改善の期限を設けることで包括外部監査の実効性を確保しています。
なお、医療センターの措置状況についても、このスケジュールに沿って対応し、その結果は地方自治法に基づき、監査委員から公表されます。
計画的に是正や改善を進めてくださるようお願いします。
今般、いわき信用組合が関与する不正融資問題が全国的にも注目を集め、いわき市に対する印象までもが悪化しかねない状況ですが、メディアの報道や第三者委員会の調査結果を見る限りでは、あのような不祥事が生じるに至った根本的な原因として、組織内における遵法精神の欠如やガバナンス体制の不備などが挙げられるように感じます。
地方公共団体においても内部統制に係る制度の構築と運用が強く要請される昨今、その中核をなす監査という仕組みを通して、事業のあり方を適切に見直していくことの重要性は、いわき信用組合の事案を引き合いに出すまでもなく、増しているように思います。
先日、湯本駅前の再開発計画に係る住民監査請求がなされたとも聞き及んでいますので、市当局におかれましては、法令に基づいて住民サービスを提供する行政機関という立場上、市政各般に渡る財務事務の執行及び管理にあたっては、いわき信用組合の事案による本市のイメージ悪化を払拭するためにも、他の規範となるような適正さを示すことへより一層努めていただくことを要望しまして、次の質問に移ります。
大きな質問の二つ目は、Well-Beingなまちづくりについてです。
一点目は、しあわせ調査についてです。
本市は、『令和7年度いわき版骨太の方針』において、Well-Beingなまちづくりを掲げ、「人口減少社会にあっても、市民一人一人のLIFEを尊重し、幸福度の高いまちづくりを目指します」と謳っています。
幸福度の高いまちづくりの実現を目指していく上では、その基礎資料となるデータを収集し、現状を定量的に把握することを目的に、「市民の方々がどの程度幸せを感じているのか」や「お住まいの地域の暮らしにどの程度満足しているのか」などについて、調査を実施する必要があります。
こうした背景の下、本市においては、令和6年度に初めて、しあわせ調査が実施されました。
そこでまず初めに、一つ目として、調査の概要について伺います。
【市答弁】
市では、市民一人ひとりが幸福感を実感できる「ウェルビーイングなまちづくり」を目指し、課題解決に向けた取組みを推進しています。
この「ウェルビーイングなまちづくり」を実現するためには、市民の皆様の幸福度を定期的に把握し、データに基づいた政策立案・検証をしていくことが重要となります。
このため、昨年度、新たな取組みとして、市民の皆様の主観的な「暮らしやすさ」と「幸福感」を把握し、数値化・可視化することを目的に、デジタル庁が導入しているウェルビーイング指標を活用した、「しあわせ調査」を実施しました。
では次に、二つ目として、結果の概要について伺います。
【市答弁】
今回の調査は、昨年12月27日から本年1月26日までの期間において、全市民を対象に実施し、4,460名と多くの方から回答をいただきました。
年齢構成としては、10代が33.3%と最も多く、次に40代が20.9%、50代が16.0%、30代が13.2%となっており、若年層や子育て世代の方々から多くの回答を得ることができました。
いただいた回答を集計すると、幸福度は「平均6.61」、生活満足度は「平均5.85」と、いずれも中央値である「5.00」を上回る結果となりました。
年齢別の傾向を分析すると、幸福度は10代以下が高く、それ以外の年齢階層では大きな差は見られないことや、生活満足度は30代、40代が他の年齢階層よりも低い傾向であることが把握できました。
また、カテゴリー別に主観指標と客観指標のデータを偏差値化したところ、「医療・福祉」、「雇用・所得」、「移動・交通」、「子育て」などにおいて、平均値の50以下の値となっています。
これらについては、昨年策定した「いわき版骨太の方針」においても、本市が重点的に取り組む施策として位置付けており、引き続き、その解決に向けた取組みを推進していく必要があると考えています。
先般、公表された結果を見るに、本市の特徴が色々と表れているように感じました。
様々なことが読み取れる結果となったように思いますが、特に、個人的に注目したのは、「健康状態」の指標において主観的な満足度が健康寿命から算出される客観的な満足度を大きく上回っている点と、「医療・福祉」の指標において主観的な満足度が医療施設徒歩圏人口カバー率等から算出される客観的な満足度を大きく下回っている点です。
この二つの指標は、「健康状態」と「医療・福祉」という分野の性質上、深い結びつきを有しているはずですが、その結果が相反するものになっているというのは、本市におけるWell-Beingなまちづくりを進めていくにあたって、その原因などについて分析していく必要があるものと考えます。
そこで次に、三つ目として、「健康状態」や「医療・福祉」の指標において主観と客観の差が大きい原因をどのように分析しているかについて伺います。
【市答弁】
「健康状態」について、「身体的・精神的に健康な状態か」の回答を基に算出した主観指標が76.4、健康寿命を基に算出した客観指標が36.8となっており、主観が客観を39.6ポイント上回っています。
また、「医療・福祉」について、「医療機関が充実しているか」等の回答を基に算出した主観指標が32.8、「特定健康診断受診率」などを基に算出した客観指標が49.6となり、主観が客観を16.8ポイント下回っています。
こうした結果につきましては、10代の回答率が高かったことなど、回答者の年齢構成をはじめ、様々な要因が関係するものと考えており、今後、専門家の意見なども踏まえながら、詳細分析を進めていきます。
これから具体的に進めていくということですので、それぞれの指標の関係性などにも着目しながら、原因だけでなくその影響まで分析していただければと思います。
あくまで個人的な意見ではありますが、「健康状態」の指標において主観が客観を大きく上回っているということは、実際以上に自分が健康だと感じている傾向が強いということですから、それが本市における特定健康診断受診率の低さなどに繋がっているのではないかと感じました。
この点については、今ほど私が申し上げたのとは因果関係が逆であるという可能性もあり得ますが、いずれにせよ、本市の特徴を捉える上で、重要な指標になるものと思います。
では最後に、四つ目として、調査の結果を今後どのように事業の評価、施策の立案、予算の編成などに活用していくのかについて伺います。
【市答弁】
市では、「しあわせ調査」と併せて、「暮らしやすいまちに、あなたが必要と感じること」をテーマに、デジタルプラットフォームを活用した市民意見の募集を行いました。
今後は、これらの調査で把握した、市民の皆様の率直な評価、ご意見をしっかりと分析し、各種施策へ反映していくことが重要と考えています。
このため、市職員を対象としたウェルビーイング指標活用に関する研修会を開催し、政策立案につなげるとともに、調査にご協力いただきました市民の皆様とのワークショップを開催するなど、市民の皆様との丁寧な対話を重ねながら、「ウェルビーイングなまち」の実現に取り組んでいきます。
Well-Beingなまちづくりを掲げているからには、その実現を目指すにあたって最も基礎となる資料がこのしあわせ調査の結果であるかと思います。
その内容については、Well-Being指標の活用を主導するデジタル庁がツールとして提供するダッシュボードの活用による他自治体との比較などの手法を通し、市政の総合企画及び総合調整に関することを所管する総合政策部が先頭に立って十分な分析を進めていただき、本市の強みと弱みを明らかにした上で、限られた地域資源をいかにして効率的かつ効果的に配分していくかを短期的な視点のみならず長期的な視点からも検討してくださるようお願いします。
近年では、証拠に基づく政策立案、いわゆるEBPMが国のみならず地方自治体においても強く求められています。
先ほど伺いました包括外部監査にも関係することですが、事業のあり方が客観的に見た場合に果たして適正と判断し得るかについて、しあわせ調査の結果を考慮しながら、これまで以上に意を用いていただくことを要望しまして、私の一般質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。